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 それは、古い映画をながめているようなセピア色の世界――。
 朱塗りの赤い柱が並ぶ長い渡り廊下を、悠里は黒衣の侍女・有弧楼に先導されて歩いていた。
                                                                たいのや
 その渡り廊下は、赤いレンガ色の屋根を頂いた寝殿造りの建物の、東・西・北にそれぞれ設けられた対屋を結んでいるもので、彼女は北の対屋から中央にある寝殿へと向かっていたのだが――それを邪魔する小さな影が一つ現れる。
 淡いオレンジの褥裙を纏った、金茶の髪の童女だった。
 その童女はうつむきながら、とぼとぼとこちらに向かってきており、反対側から近づいている悠里たちには気付いていなかった。
「夏蓮?」
 悠里が問いかけると、その童女の琥珀の瞳が悠里の姿を捕らえ――迷子が母親に再会できたような表情をしたかと思った瞬間、その大きな目から大粒の涙をこぼした。
「伯母うぇ〜っ」
 夏蓮と呼ばれた童女は、泣き叫びながら駆け寄ってきて、悠里の足に抱きつく。受け止めた悠里は小さな肩を抱き、慈しむようにその頭をなでた。
シュウ
「秋が……」
 シュウラン
「秋嵐がどうしたの?」
 童女の双子の弟の名前が出たので、やんわりと問いかける。
「いじわる、するのっ。虫なんか、嫌いなのに〜っ」
「そう。怖かったね」
「うん」
 夏蓮は泣きながら、えぐえぐしゃくりあげている。
「秋嵐さまの悪戯も、困ったものですね……」
 泣き虫な姪の頭を撫で続けている悠里を見て、後ろに控えていた有弧楼はあきれた顔をしている。
「秋嵐も悪気はないのよ、きっと」
「そうでしょうか?」
「たぶん、ね」
 そう言ってから何かを思い出した悠里は、有弧楼に「少し遅れると、伝えてもらえるかしら?」と言う。
「畏まりました」
 有弧楼は一礼し、いそいそと寝殿へと向かった。
 その後ろ姿を見送り、足元につかまったままの姪へと視線を移す。
「落ち着いた?」
「うん」
 夏蓮は衣装の裾で涙をごしごしこすりながら、悠里を見上げる。
「夏蓮は女の子なんだから、あまり強くこすっちゃダメよ?」
 諭すように言いながら、悠里は抱きついてきた夏蓮の腕を軽く解くと童女の目線に合わせて屈み、衣装の袂に忍ばせていたハンカチを取り出して夏蓮の涙を優しく拭いてあげる。
「うん」
 夏蓮は目を閉じ、目元や頬を濡らした涙をぬぐっていくハンカチの感触に安心感を覚えたいたようだが、ハンカチが離れていくのを感じ、目を開ける。
「…………」
 悠里はそのハンカチを折り返すと鼻にもって行く。
 夏蓮は悠里のしようとしていることに気付き、そのハンカチで鼻をかんだ。
「もういい?」
「うん」
 鼻の回りも綺麗に拭いて、汚れた部分が表に出ないように小さく折りたたんで袂にそれを戻すと、童女から強烈な視線を感じて目を向けた。
「?」
 じーっと見つめられ、何だろう? と思いながらゆっくり瞬く。
「あのね、今日一緒に寝てもいい?」
「いいですよ」
 悠里が答えると、夏蓮は満面の笑みを浮かべる。
「やっぱり、夏蓮は笑った顔が一番可愛いわ」
 悠里がぎゅっと抱きしめると、夏蓮はその腕の中で更に笑顔になった。

 

「あっ、お目覚めになられた」
 悠里が再び目覚めた時、わりと近いところから女性の声がしたので、声がした方へと視線を向けると――ハチミツのような色の淡い琥珀の瞳と目が合った。
 目が合った瞬間、太陽のような明るい笑顔を向けられる。
 金茶の髪を後ろで束ねた、淡いオレンジ色の活動的なデザインの華服を纏った二十代前半くらいの楚々とした女性がそこにいた。
 目覚める直前に見た夢の女の子の笑顔が、目の前の女性と重なる。
「ご気分は、いかがですか?」
 夢の内容は忘れてしまったが、あの子を大きくしたらこんな感じなんだろうな、とぼんやり思いながら答える。
「いい感じです」
「よかった」
 嬉しそうにつぶやくその女性の後ろに有弧楼の姿が見えたので、悠里は問いかける。
「アルコルさん、私あれからどれくらい眠っていたんですか?」
「こちらの世界の感覚では半日ほどですが、あちらの世界では2日くらいになるでしょうか」
「そんなに?」
 うなずく有弧楼を見て、悠里は驚く。
「はい。あちらとこちらは時の流れ方が異なりますので……」
「えっと、この方は?」
 視線を目の前の女性に向ける。
「この方は――」
「わたくしは南斗星君が第二子――南斗朱雀・夏蓮と申します。夏にハスの蓮と書いて、夏蓮です」
 有弧楼の言を奪うように口を開いて、その女性は名を告げる。『南斗』は夏蓮の母の官職名からきており、『朱雀』はこの世界では第二子という意味もあった。
「夏にハス――で、夏蓮さん?」
「はい。さんは付けずに、夏蓮とお呼びください」
 はきはきとした物言いと、彼女から感じる勢いのようなものに押されそうになりながら、悠里は告げられた名前を口の中で反芻する。
「事情は伺っております。悠里様がこちらに滞在される間、有弧楼とともにお世話させていただきます」
「あ、はい……」
 にっこりと微笑まれているのに、迫力を感じてしまうのは、何故だろう? と思いながら、悠里はうなずくしかなかった。
「悠里様……」
「はい」
 呼びかけられて、有弧楼の方へ視線を向ける。
「もう痛みは引いているはずなので、お起きになられても大丈夫ですよ」
 そう言われて、悠里は腕を動かしてみる。眠りに落ちる前は身体を少し動かすだけでも痛みを感じたのに、それが消えていた。 
「本当だ。あんなに痛かったのに」
 悠里が身体を起こそうとすると、夏蓮がすっと身を乗り出し、「まだ無理はなさらないで下さいね」と、起き上がるのを手伝ってくれた。
「多羅様が癒しの力を注いでくださったので、回復も早まったのでしょう」
 掌をかざされた時、暖かなものを感じたのは、有弧楼の言う『癒しの力』だったのだろう。あの暖かなものの正体を知り、悠里は感心した。
「多羅さんて、凄い人なんですね」
「そりゃーそうです。伯母上の癒しの力は、太極でも屈指ですから!」
 こぶしにぐっと力を込めながら、椅子に腰をかけた夏蓮は語りかける。その熱のこもった物言いに、悠里は思わずぽかんとしてしまい、そのやり取りを見ていた有弧楼は、忍び笑いをする。
「夏蓮様――」
「なに?」
「悠里様が吃驚なさっておいでですよ」
 ぽかんとしていた悠里の表情に気付き、夏蓮は自己嫌悪した顔をする。
「あ。いつもの癖が……」
「熱くなると、周りが見えなくなるのが、夏蓮の悪い癖だよね」
 第三者の声がして、声がした方へ――寝室の扉へと視線を向けると、そこには銀に近い淡い金髪の、ミントグリーンの漢服を纏った貴公子然とした風貌の青年がいた。青年の姿を認めると、有弧楼は両手を前に組んで礼をする。その一方、夏蓮は座っていた椅子を派手に倒しながら立ち上がった。
「秋嵐! おまえ、いつの間に!?」
 夏蓮の怒ったような口調に、秋嵐と呼ばれた青年は優雅に扉を後ろ手で閉めながら、ピジョンブラッドのルビーのような紅い目を意外そうに開く。
「ノックはしたよ。まあ、夏蓮がうるさくしているから気付いてもらえなかったようだけど」
「何だって?」
「愚姉がご迷惑をおかけして申し訳ありません。この通り、いつもうるさいものですから」
 淡い翡翠色の大理石の床の上を、軽やかな足取りで進みながら、秋嵐と呼ばれた青年は夏蓮のことを無視して悠里に話しかける。
「ぐっ、愚姉って、おまえっ!」
「ちょっと先に産まれただけで姉になれるんだから、不公平だと思いませんか?」
 にっこりと微笑む秋嵐。髪と目の色は違っていたが、姉弟というだけあって、夏蓮と似た顔立ちをしていた。
「そんなこと言ったって、今更変えられるわけがないだろう」
「別に弟だから不満だとは言っていないよ。でも、伯母上に久方振りに会えて嬉しいのは判るけどさ、僕に内緒って、どういうことかな?」
 責めるような眼差しを夏蓮に向かながら、秋嵐は彼女が倒した椅子を流れるような動作で立て直す。
「そっ、それは……」
「まあ、夏蓮のことだから僕のことなんて忘れてたんだろうけどさ」
 図星だったらしく、夏蓮は言葉を詰まらせた。
「やっぱり」
「解っているのなら、どうしていつもわざわざ言うんだ!」
「面白いから」
 ぼそっとつぶやく秋嵐。その声が聞こえず、夏蓮は聞き返す。
「何だって?」
「そんなことより、有弧楼」
 さっきまで夏蓮をからかっていたとは思えないほど真面目な表情をした秋嵐を見て、姉弟喧嘩をにこやかに見守っていた有弧楼は不思議そうな顔をした。
「何でしょう?」
    あんこく
「今、闇国の方が少し騒がしいらしい。七魔神の誰かが何かをたくらんでるかもしれないから注意せよ、と母上から伝令があった」
(あんこく? しちまじん?)
 聞きなれない言葉に首をかしげる悠里だったが、夏蓮と有弧楼の表情が変わった。
「闇国が?」
 夏蓮の問いかけに、うなずく秋嵐。
「だから母上たちが奈落の門まで鎮圧に向かったよ」
「伯母上がいるこんな時に……」
「案外、こんな時だからなんじゃないの?」
 そう言うと、何のことを話しているか解らない悠里を見遣り、秋嵐はベット脇に屈んだ。
「そう言うことなので伯母上、警備しやすい部屋へ移動させてもらいます」
「はっ?」
 秋嵐に「おばうえ」と言われ、こんな大きな甥を持った覚えはないと思った悠里は、一方的にハグされた――と思ったらいきなり足元を覆っていた夏掛けごと抱え上げられてしまい、固まった。
「どさくさに紛れて何すんだー!」
 夏蓮の抗議の声が上がる。
「伯母上を安全なところに避難させないと」
「今は『伯母上』じゃないだろう!」
 しれっと言う秋嵐に、激しいツッコミを入れる夏蓮。
「名前、聞いてないし」
「子供か!」
 何で『伯母上』呼ばわりされているのかさっぱりわからなかったものの、そのまま放っておくと二人の口論がヒートアップしそうなので悠里は答えていた。
「悠里です」
「今生はユウリというお名前なんですね。素敵な名前だ」
 白い歯をキラキラさせながら秋嵐は、夏蓮と言い合っていたのが嘘のような笑顔を悠里に向け、悠里を支えていない方の手で悠里の右手を取ると、手の甲に恭しくキスをする。
 その流れるような動きに思わず見とれてされるがままになっていると、秋嵐は上目使いに悠里を見て目元をほころばせた。
「申し遅れましたが、僕は秋嵐といいます。そのまま秋嵐とお呼びください」
「色目を使うな〜っ!」
 夏蓮の怒号が響き、夏蓮と秋嵐のにぎやかな応酬が再び始まった。秋嵐の行動はあまり気にも留めていなかったが、それを聞きながら、悠里は思わず笑っていた。
「ユウリさん、ちゃんと捕まっていて下さいね」
 夏蓮の相手をしつつ、悠里に声をかける秋嵐。
「あ、はい」
 膝下と脇下をすくい上げるようなお姫様抱っことは違い、腕を腰にまわして抱えられていたので、悠里の捕まるところは頭しかなかったが、頭に抱きつくわけにもいかなかったので、手元にあった肩にそれぞれの手を置いた。
「遠慮しなくてもいいのに……」
「遠慮するわ!」
 間髪いれずに、夏蓮のツッコミが入る。
「夏蓮は真面目だからな〜」
「真面目の何処が悪い!」
 ぎゃあぎゃあ言い合う二人をよそに、自分の視点がいつもよりも高いところへと移動したことで、初めて自分が寝かされていた部屋の全貌を見ることになった。
(寝ていて、気付かなかったけど――)
 寝かされていた天蓋つきの寝台もそうだが、部屋の各所にある調度品や部屋の装飾は、博物館とかで展示されていそうなくらい豪華なものだった。
(紫禁城とかにありそうなものばかりだし、もしかしてすごいところ来ちゃったんじゃ……?)
 悠里がいろいろと考えている間に、悠里を抱えた秋嵐と夏蓮は寝室を後にし――その殿をつとめるように、寝室の扉を閉めた有弧楼が続いた。
 部屋を出ると、いくつも扉のある赤絨毯の敷かれた長い廊下があり、左右の壁には季節の花や景色、龍や鳳凰などが描かれていた。場所によっては何かの物語の一場面を描いたものがあり、それらを電気照明とは違う動力の明かりが照らしていた。
 まだ言い合っている夏蓮や秋嵐にとっては日常的なものなので、気にも留めないものだったが、悠里にとっては目に映るものすべてが初めて見る珍しいものだった。
 廊下を抜けた先に赤い柱の続く回廊があり、その回廊に差し掛かると、急に視界が青く染まった。
「きれい……」
 思わずつぶやく。
 悠里の目に映ったのは、夜明け前の一瞬に現れるどこまでも青い世界。
 そこでは淡い色の太陽と蒼白の月が同時に空に浮かんでおり、泰山の頂上付近に造られた紫微宮からは、雲海の下に広がる鬱蒼とした緑の山々が見渡せた。
「人の世界のように昼夜の変化はありませんが、日輪と月輪が空を巡回しています」
 有弧楼から『巡回』と言われ、思わず空に輝く太陽と月のようなものを見た。確かに、悠里の知る太陽と月とは異なる動きをしている。
「あれって巡視船か何かなんですか?」
「はい。闇国――闇国というのは、天魔と呼ばれる魔族の住む魔界のことなのですが、闇国からの侵入者や冥界からの脱走者を発見するためにあれは空から監視しています。今はまだ平時なので日輪・月輪のみですが、緊急時には七曜すべてが稼動することになるでしょう」
 有弧楼からもたらされた説明は、悠里の想像を絶するものだったので、驚愕するしかなかった。
(ここって一体、どんな世界なの?)
 正常な状態なら、「異世界なんて、漫画やアニメじゃないんだから」と、一笑に付すこともできただろう。
 しかし、フィクションの世界であるはずのその『異世界』へと実際に来てしまっている。
 本来なら、真っ先に元の場所へ還る方法がないか尋ねるべきなのだろうが、悠里の場合、肝心の記憶がないせいか普通なら真っ先に思い浮かべる『還りたい場所』が思い浮かばない。
 その記憶も「直に戻るだろう」と有弧楼に言われていても、いつ元に戻るかわからないせいか、悠里は不安を感じていた。
「ユウリさん、そんな顔しないで下さい」
 下から声がして、間近にある秋嵐の端整な顔を見下ろす。
 色々と思案しだし、黙り込んでしまった悠里に気付いて、声をかけたらしい。
「大丈夫。ちゃんと元の世界に還れますから」
「帰れるんですか?」
「もちろんです」
 笑顔で答える秋嵐。その口ぶりを見ると、元の世界に戻るのは悠里が思っているほど難しくはないようだ。その言葉で少し心が軽くなった悠里は、さっき感じた疑問を投げかけていた。
「そういえば、何で『おばうえ』?」
 秋嵐はギクリとした顔をして立ち止まり、夏蓮は非難するような目を秋嵐に向けた。
「おまえが不用意に言うからだ!」
「しょうがないじゃないか。僕だって伯母上に会えて嬉しかったんだから」
 質問した悠里そっちのけで、双子がまた口論を始めてしまった。
(仲がいいんだか悪いんだか……)
 思わず呆れる悠里。そんな二人をよそに、後ろに控えていた有弧楼が口を開いた。
「悠里様は輪廻転生、という言葉をご存知ですか?」
「生まれ変わりのことですか?」
 投げかけられた言葉の意味を量りかねて、一瞬だけ逡巡した悠里が答えると、彼女はうなずく。
「はい。いきなりこのようなことを言われても信じられないかも知れませんが、悠里様はお二人の母君様の兄君様に当たる方の奥方様の生まれ変わりなのです」
「は?」
 予想外のことを真面目な顔をして言われ、思考がフリーズしてしまう。その傍らで口論していた夏蓮と秋嵐は、その内容を耳にして顔色を変え――二人同時に有弧楼を咎めるように声を上げた。
「「有弧楼!」」 
「たとえ悠里様の今生の記憶にはなくても、いずれは分かることです」
 咎められても、全く悪びれることのない有弧楼に、夏蓮が「それはそうだけど!」と噛み付くように言う。
「だからって、今ここで言わなくてもいいじゃないか」
「こちらが知っていたとしても、見知らぬ者にいきなり『伯母上』呼ばわりされれば、誰でも戸惑うと思いますが?」
 有弧楼に説教されるように言われて、秋嵐が反省するような顔をした。
「それは僕が悪かったよ」
「うん、お前が悪い」
 夏蓮に言われても、秋嵐は言い返すことはせずにしゅんとする。
「…………」
 三人のやり取りを見て、悠里は実感が持てなかったものの、夏蓮を初めて見た時、初めて会ったような気はしなかったので、悠里なりに納得することにした。
「わかったから――そんな顔しないで」
 子供をなだめるように、秋嵐の絹のような白金の頭をなでる。頭をなでられた秋嵐は不意をつかれたように顔を上げた。
「覚えてなくて、ごめんね」
「貴女が謝る必要はないです」
「でも、何だか私が原因みたいな感じだったし」
「ユウリさん……」
 しんみりとした空気がその場を包む。
「差し出がましいことをし、申し訳ありませんでした」
 両手を前で組み、有弧楼が謝罪の言葉を口にすると、秋嵐はかぶりを振った。
「いいよ。僕が悪かったんだし、ユウリさんが僕たちの伯母上だった人でも、今は伯母上とは違う人なんだってことを、自分でもすっかり忘れてしまっていたようだから」
                            タ チ
「普段は嫌なくらい冷静な性質なのに、珍しいな」
                   ひ と
「伯母上は特別な女性だったからね。夏蓮にとってそうだったように」
「そう、だな……」
 双子は顔を見合わせ、同時にふっと笑みをこぼす。
「まさか、こんなところで時間を無駄にしてしまうとは思わなかったよ」
「同感だ」
「ユウリさん――」
 秋嵐は声をかけながら抱きかかえた悠里を見上げる。
「はい」
「走りますから、ちゃんと捕まっていて下さいね」
 言いながら、秋嵐は夏蓮に目配せする。夏蓮はその目配せの意図に気付き、了承するようにうなずいた。
「え?」
 心の準備が出来ていなかった悠里は、急に猛スピードで走り出した秋嵐の首に、慌ててしがみ付くことになった――。

 

 

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